【社内コミュニケーション改善】キャリアコンサルタントの1on1面談活用法

昨今のテレワークや価値観の多様化により、社内コミュニケーションの分断が進んでいるとの声をよく耳にします。

組織内の分断により引き起こされる部署間・従業員間の連携不足は企業運営上の大きなリスクとなり、それらの原因・対策については多くの考え方や施策事例が紹介されています。
本記事では、組織の最も重要な構成要素である「人(従業員)」にフォーカスし、キャリアコンサルタントによる1on1面談が社内コミュニケーションの改善にどう役立つのかのポイントを解説します。

<筆者プロフィール>
稲岡篤成(いなおかしげなり)
・国家資格キャリアコンサルタント
・2級キャリアコンサルティング技能士

製造業・金融業・サービス業、農業など4業界にわたり、営業・人事・総務・経理・財務・法務など多くの部門で管理職や役員の経験を持つ。
「人と組織」を扱う領域において、採用・育成・労務・評価などで関わった人数は3,000人を超える。

組織運営の現場で、「制度があっても、対話がなければ組織は機能しない」という共通点を痛感し、対人支援の専門家を志しキャリア理論と実践を学び資格を取得。
現在は「受容・共感・傾聴」を大切にした1on1面談を通じて、従業員の本音を引き出し、社内コミュニケーションの活性化など組織課題を可視化・改善する支援を行っている。

<目次>

1.社内コミュニケーションの分断が起こす組織リスク
2.キャリアコンサルタントの1on1面談のポイント
3.上司面談とどう違う?
4.キャリアコンサルタントによる面談の進め方
5.組織にどんな変化が起こるか
6.まとめ

1.社内コミュニケーションの分断が起こす組織リスク
 ~分断が進むと人と組織の成長が止まる~

社内コミュニケーションの分断は会社にとって深刻なリスクに発展します。

「部下が何を考えているのか分からない」「話しかけても反応が薄い」「理由もわからないまま早期退職してしまった」など、企業内でのコミュニケーションに関する悩みは尽きません。テレワーク、価値観の多様化、仕事の高度化、更にAIの急速な普及、など働き方がどんどん変わりつつある中で、社内コミュニケーションは確実に減少しています。

近年の調査では、86%の企業が「社員間のコミュニケーション不足は業務の障害になる」と感じています。更に、企業規模を問わず6割以上が「自社に課題がある」と回答しており、多くの企業が業務や経営に影響するリスクとして捉えていると言えます。

また、社内コミュニケーションに「課題がない」企業では従業員エンゲージメントが「高い」と答えた割合が50%でしたが、一方、「課題がある」企業では 22% にとどまり、「低い」と答えた割合は36%でした。すなわち、コミュニケーションの良し悪しがそのまま社員のやる気や働きがいに反映されていることが分かります。 (※HR総研調べ)

社内コミュニケーションの分断が生む数々のリスク
・雑談が減る
・部下が相談できず一人で抱え込む
・誤解や思い込みで人間関係がギクシャクする
・上司が部下の本心を把握できない
・評価への不満が溜まる
・モチベーション低下が放置される
・生産性が低下する

部下にとっては、誰にも言えない不安、言い表せないモヤモヤ、頑張っているのに評価されない孤独感などが少しずつ積もっていきます。その結果、メンタル不調・ハラスメント問題・生産性低下・人間関係の悪化・退職など会社にとって深刻なリスクにつながります。

私がこれまで多くの組織や人に関わってきた中で言えるのは、

「対話がない組織に成長は無い。何も手を打たず放置すれば劣化する。」

という事です。
そのため、社内コミュニケーションの改善には、キャリアコンサルタントによる1on1面談が有効な選択肢となります。

<要点の整理>
・コミュニケーションの分断の背景は働き方の変化によるもの
・放置すると重大リスクにつながる
・早い段階で「対話の場」をつくることが重要。一つの策としてキャリアコンサルタントによる1ON1面談がある。

 

2.キャリアコンサルタントの1on1面談のポイント
 ~社員が安心して話せる場づくりが最大の価値~

「国家資格キャリアコンサルタント」は、厚労省が認定するキャリア支援・相談支援の専門資格です。
面談では「ただ話を聞くだけ」ではなく、下記のように従業員の内面に寄り添い、必要な気づきを引き出すよう心がけます。

  • 否定されない安心感がある→上司には言えないことも話しやすい
  • 守秘義務が徹底されている→評価を気にせず本音が話せる
  • 受容・共感・傾聴の専門家→話しを進めていくうちに気持ちが整理される
  • 組織と個人、両方を理解できる→現場課題の背景まで把握しやすい

また、「受容・共感・傾聴」は最も重視する姿勢とされています。

「受容」:どんな言葉も受け止め否定しない、安心して話せる場をつくります。
安心がなければ、本音は出ません。この「安全領域」がなければ深い話には入ることができません。

「共感」:表情・態度・言葉で「あなたの味方」であることを伝え関係構築を図ります。
人が心を開くために不可欠です。表情・うなずき・言葉の選び方などを通して「あなたの味方です」というメッセージを伝え、信頼関係を構築します。

「傾聴」:問いかけと沈黙を使い、内省を促すよう深く対話します。
表面的な会話ではなく、「本人も気づいていない感情」に気づいていくよう会話を深堀りします。

キャリアコンサルタントによる1on1面談は「正解を教える場」ではなく、本人が安心して自分の考えを整理し行動への気付きを与える場だと考えています。

<要点の整理>
・キャリアコンサルタントによる面談は「受容・共感・傾聴+守秘義務」を重視
・話すことによって整理・気付きが生まれる

 

3.上司面談とどう違う?
 ~「本音を言えない」ことが最大の違い~

上司との1on1面談が思うような成果が出なかったという話は有りがちですが、その理由はとても明確です。
「上司が悪いから」ではなく、「上司・部下」という立場の構造自体が本音を言えない仕組みになっているからです。

◆上司の1on1面談がうまくいかない典型パターン
・評価面談と混同され部下が安心して話せない。
・話しても無駄と最初からあきらめている
・雑談で終わる・上司としての指導モードになり、「正解」を指導しようとする
・そもそも上司自身が1on1面談の手法を教わっていない

◆キャリアコンサルタントの1on1面談
守秘義務に配慮し、中立の立場なので安心して話せる
・評価と切り離された「安全な場」である
・話す量は従業員が圧倒的に多い(7~9割)
・組織の事情と個人の心の「両方」が理解できる
・キャリア理論に基づいた深い対話が可能
・内省を促し主体性を引き出せる

このように、上司の努力不足ではなく、「立場の構造」そのものが本音を抑えてしまうと考えています。
だからこそ、上司との面談とは別に「安心して話せる場所」をつくることに意味が有ります。

<要点の整理>
・上司面談が機能しないのは「立場の構造」が原因
・相談者が安心できる第三者による場が必要

 

4.キャリアコンサルタントによる面談の進め方
 ~本人の今に寄り添うことが軸となる~

キャリアコンサルタントは働く人の悩みや課題を整理し、前に進むためのヒントを一緒に見つける専門家です。
ここではオーソドックな流れについて説明します。

①現状を安心して“話せる”状態づくり(関係構築)
・緊張がある場合は雑談から
・安心して話せる環境づくりを重視

②話したいテーマを整理し、深掘り
・仕事、人間関係、感情の揺れなどを受容・共感・傾聴
・話の奥にある「本当の気持ち」まで丁寧に探る

③気づきの言語化と次の行動の整理
・無理なく取り組める小さな一歩を一緒に設定
・本人が自分で選ぶことを大切にする

このように、「話せる環境をつくり」「本音を引き出し」「行動につなげる」というステップを踏み対話を続けて行きます。

実際はこんな相談が寄せられます。
①業務の負担が大きいが評価が気になり上司に弱音を言えない。
→評価と無関係なので安心して話してください。(まずは「弱音」から深堀り)

②上司がすぐ感情的になるので気を遣うのに疲れる。
→具体的な状況を詳しく話してください。(周囲の状況・感情の整理などから深堀り)

③部署異動したいが言い出せない
→現在の業務内容についてお話ください。(まずは現状の整理から深堀り)

上記はあくまで一例で、相談に対してのアプローチも様々です。
主導権はあくまで相談者にあり、そこをどう聴き、深堀りしていくかで面談の方向性が変わっていくと考えます。

 

<要点の整理>
・1on1は「今の本人」に寄り添う対話プロセス。まず「安心して話せる状態」が重要。
・会話の主役は相談者であり、相談者のペースで進む

 

5.組織にどんな変化が起こるか
 ~対話が増えると組織の空気が変わる~

 キャリアコンサルタントによる1on1面談を導入した企業には次のような変化が起こります。

◆期待できる効果
・社内コミュニケーションの活性化(量・質ともに)
・職場の雰囲気の改善
・職場の心理的安全性の向上
・離職の予防
・メンタル不調の予防
・エンゲージメントの向上
・管理職の「聴く力」の向上

このように、従業員が「話していいんだ」「相談していいんだ」と思える環境は、社内コミュニケーションの基盤になります。

組織が変わるきっかけは、実は大きな改革ではなく、「小さな対話の積み重ね」 であると感じています。

 

<要点の整理>
・1on1は「今の本人」に寄り添う対話プロセス。まず“安心して話せる状態”が重要。
・会話の主役は相談者であり、相談者のペースで進む
・社内改善の大きなヒント、キッカケになる

 

6.まとめ

この記事では、社内コミュニケーションの分断が引き起こす組織リスクとその改善にキャリアコンサルタントによる1on1面談がどのように役立つのかを解説しました。

■要点整理
・上司との1on1面談で本音が出にくいのは立場構造的な理由による
・キャリアコンサルタントの1on1面談は、受容・共感・傾聴に基づき安心して話せる場を提供
・社内コミュニケーションの活性化が組織改善に効果が波及する

多くの企業で「上司と部下のコミュニケーション課題」は常に上位に挙げられています。また、離職理由の第一位は「人間関係」であることも複数の調査で明らかになっています。その対策としての「1on1面談」は導入率が高く、「効果を感じる施策」としても上位に位置づけられています。(※HR総研調べ)
ただし、上司に対して本音が出にくい面もあり、「対人支援の専門家」であるキャリアコンサルタントによる中立的な1on1面談は選択肢の一つとして有効性が高いと言えます。

働く人が安心して話せる環境は、組織の土台を強い方向へ導きます。
ぜひ自社にとって無理のない形で、一歩ずつ取り組んでみてください。

ご覧いただきありがとうございました。

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